気休めなもの。役立ちのもの。

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サルとイヌの共同ブログ

なぜリーダーには現場力がないのか?

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「現場力」。言葉は簡単、実践は超困難。

ライフネット生命社長岩瀬氏が大絶賛の「リーダーの現場力」を読了しました。一貫したキーワードは「現場力」。ボロボロだったミスターミニットを当時29歳で立て直していく迫氏の姿はアラサー世代として強く響くものがありました。表題は国際協力というフィールドで「現場力」の重要性がわかっていながら、なかなか実践できない自分に対しての問いかけでもあります…。 

 

1. 腹の底から「現場」を理解するのが難しい

頭で理解していても、腹の底」から理解するのは、とても難しい。誰も「現場が重要じゃない」なんて言いません。ただ「現場が重要である」というのを腹の底から理解し、信じていないとそれが「行動」にならないのが事実。

本書にある通り、リーダーが現場にしか答えはない、というのであれば、出向いていって「教えてください」と頭を下げるのも厭わない、そういった「行動」が自然とでてきてもおかしくない。自分も含めて「現場は大事だけど…」の「だけど…」が大きな壁になっています。 

 

こんな状況になった原因は、事業の本質であり、最大の収益ドライバーが「現場」であるということを経営サイドが腹の底から理解していないからだ。

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本書を読みながら、ふと「踊る大捜査線」を思い出しました。踊る大捜査線の幹部陣と同じで、リーダー(つまりマネジメント職)の心の底のどこかには「クーラーの聞いた部屋で決定権を持っている俺の方が偉い」という気持ちがどこかにある。「そんなことはない」と自分が問われれば否定してしまうでしょうが、現場の声を吸い上げて活かしきれていない、つまり行動に移せていない、ということは弁明の余地がないのとイコールです…。

繰り返しになるが、現場と経営の違いは、「偉さ」ではなく役割。リーダーに必要なのは、むしろ現場に「自分の知らないことや経営のヒントを教えてください」とお願いする姿勢だろう。

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たとえ現場の重要性を理解して行動に移せても、その先には「現場が正直で重要な意見を忌憚なく与えてくれるか」という難題が残ります。そのためには「信頼される」ということが最優先。現場を尊重するから信頼される、信頼されるから現場を尊重できる。これほど文字すると自明なのに、行動に移すのが難しいことはないのです…。

 

けれど、「論」の正しさをいくら振りかざしても人はついてきてはくれない、と澤田さんは言う。新米リーダーである僕が最初にしなければならないことは、正論を振りかざすことではなく、みんなの信頼を得ることだ。「立派な経営者」を目指す前に、「信頼されるリーダー」にならなければならなかったのだ。Read more at location 533

 

2. 社会的想像力が乏しい

本書内で紹介されている社会学の「社会的想像力」という考え方は、不機嫌な職場の救世主かもしれません。簡単に言えば「人が悪いのではない、環境や仕組みである」というもの。少し長いですが、以下の例がわかりやすいので引用させて頂きます。

 

たとえば、ホームレスを見て「この人は怠け者だから」「能力が低いから」「幼少期のトラウマがあるから」ホームレスになっているのだろう、と判断するのは社会学的想像力とは遠い考え方。問題が起きている理由を個人に求める、心理学に近い考え方だ。 反対に、「こういう地域で育ったから」「こういう家族構成だから」「こういう時代に生まれたから」など、問題を国や地域、家族、宗教といったグループとひもづけるのは、社会学的想像力を踏まえた考え方ということになる。だから、「企業」という集団の在り方を論じる経営学も、社会学に近いと言えるだろう。

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ともすれば、非常に他人任せで、いわば「甘やかし」の論理でもあります。しかしながら、「こいつの努力が足りない」「あいつの能力が低い」というのは、むしろリーダーに対する「甘やかし」の論理。今そこにあるリソースを十分に活用すべく、社会学的な視点を取り入れて、現場の仕組みを構築する必要があると言えそうです。

 

責任はすべて個人ではなく仕組みにある」という社会学的な考え方に基づけば、担当者のアクションが鈍くなったら、それは組織のキャパシティを超えてしまったという「サイン」だ。

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3. 「好き」と「コミットメント」が欠けている

上記2つに増して重要になるのは「好き」と「コミットメント」。好きであればコミットできるし、コミットできれば好きでいれる。好きでコミットしていれば、腹の底から現場を大切にできる。そして「好き」は努力次第で生み出せる。本書の中でもっとも大切な部分ではないかと思いました。

 

リーダーであろうとなかろうと、自分の事業を好きになる努力は不可欠だ。そして、嫌いでさえなければ大抵のものは努力次第で好きになれるものだと、僕は思う。

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 リーダーは、誰よりも「事(こと)」にコミットメントしていなければならない。そしてそのためにはまず、心理的にも物理的にも「事(こと)」にどっぷり浸かれる環境に身を投じることだ。

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その「好き」と「コミットメント」があるからこそ、大胆な施策が打てるのだと思います。 

 

僕は「『なんとなく』はすべて止める」と腹をくくり、そこで浮いた人やお金を現場に投資することにした。

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文字にすると2行になる上記の行動。しかし並大抵のコミットメントでないことがひしひしと伝わってきます。

 

今日の「役立ち」

文章の中に、「マザーハウスで働きながらアート学校に通う」という下りがあります。私は、その気持ち、非常によくわかります…。今はまだマシですが、自分も本当に迷走している時期がありました。これは誰もが一度は通る道ではないでしょうか。自分に足りない何かを探してスキルと成長を求める、でも本当に自分が実感できる成長は「好き」と「コミットメント」の延長にしかない。 

 

自分のスキルを高めるためにあらゆる手を尽くした。でも、それが結果に結びついている感覚は乏しかった。 その理由は、いまならわかる。 結果を出すためには「自分の成長」を考える必要はなかったのだ。自分の成長は「事(こと)」に当たることの副産物でしかない。それなのに、副産物を目的にして、囚われていた。

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将来の働き方、今後のキャリアに悩み始めているアラサー必読の書と言えます。