気休めなもの。役立ちのもの。

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サルとイヌの共同ブログ

若手国連職員の年俸900万円は高待遇すぎるのか?

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900万はすごい。でも…。

 

国連職員(JPO)のippeiさんの記事が面白かったので紹介。普段の国際協力関係の記事も面白いですが、赤裸々に語られる日頃の生活、そして給料まで。

 

 

国連職員ってなに?

国際連合広報センターの記事に詳しいですが、国連職員は国際公務員であり、世界(途上国のあらゆる問題に対して、解決の一助になる活動を行うことが求められているプロフェッショナルな集団です。

 国連の職員とは | 国連広報センター

 

若手でも年俸900万。

ippeiさんのブログにあるとおり、ジュネーブ勤務、30代前半独身だと年俸は約900万とのこと。

国連職員の給料(30代前半独身の場合) | Ippei Tsuruga

 

契約形態や勤務地、グレードによって給料は変化します。こちらのサイトに入力すると若手で各勤務地での程度の給料かが分かります。イラクアフガニスタン勤務ですと、若手でも年俸1200万ですね。

 

生活コストや職業の不安定性?

もちろん高い給与水準なのは事実ですが、ippeiさんのブログにもある通り、「ジュネーブは物価が高い」ことに加え、終身雇用ポストではない場合は「契約が更新されないリスク(ポストに採用されないリスク)がある」という点も加味する必要があります。契約更新がなされないリスクを考えた場合、ある程度は貯蓄に回す必要があるので、必然的に使える額は減りますね。

 

生活コストも地域によっては変わるので収支としては、贅沢しなければ、月に20万円〜30万円は自由に使える(≒貯蓄に回せる)イメージでしょうか。確かに一般の給与水準から比べると高待遇といえるかもしれません。

 

なお仕事に関しては、以下の通り最高水準を求められています。

 

国際公務員として、あなたにはその職務と地位に関連するあらゆる事柄において最高水準の能率、能力及び誠実を保つことが期待されています。誠実には高潔さ、中立性、公平性、正直さ、そして実直さが含まれます。

国連の職員とは | 国連広報センター

 

職業柄、国連職員の方とお仕事することがあります。「最高水準の仕事を本当にしているのか」と問われれば、それは「人による」という月並みな回答になってしまうかと…。どの組織にいても、パレートの法則の如く、80%の仕事を20%が回しているような状況だと思うので、容易に想像いただけるかと思います。また外部からは国連の方がどのような契約形態か、何となくしかわからないんですよね。でも自分の仕事にコミットしている素晴らしい方は少なからずいます。

 

「好きでやってるのに高すぎる」という議論は稚拙すぎる

国際協力に従事する端くれとして、たまに遭遇するのが「好きでやってるのに高い給料をもらってズルい」という議論。確かにそうなんです。好きでやっていて、好きで日本より生活環境の厳しい国に赴任し(私の会社はあんまり選べません)、好きでやっています。

 

国連は、各国から拠出される国連分担金で賄われ、日本はアメリカに次いで負担額は世界2位です。2017年でも約244百万ドル、つまり約270億円くらいを税金から負担しているのです。2015~2017年国連通常予算分担率・分担金 | 外務省

 

税金から出ていると知るとさらに「好きでやっていることに税金から高い給料をもらってズルい。ボランティアやNGOを見習え」と言ってくる人が増えます。本当に。でも自身がいくら税金を支払っていて、どれくらい税金(公共インフラやサービス)の恩恵を知っている人は、ほぼ皆無。

 

国連職員を始め国際協力業務に従事している人は、「安全保障」という目に見えにくい広い意味での公共インフラを築くために仕事をしています。格差や差別から来るテロといった国家の安全を脅かす状況を未然に防ぐためであり、それはひいては納税者(日本国民)につながると信じているから、日本は国連分担金を支出しているのです(もちろん外交的な要素は多分にありますし、財務省がそこまで考えているのかは不明ですが)。

 

今日の「気休め」

少し話が脱線しましたが、タイトルの問への答えとしては「高待遇かはなんとも言えない」というなんとも曖昧なものになってしまいます。「世界最高水準の仕事をしてくれていて、それが安全保障にきちんとつながっている」のであれば安いですし、上記の反対であれば、高待遇すぎる、ということでしょう。

 

一方、低い待遇では優秀な人が集まってこない、という議論もあります。最高水準のレベルを求めるのであれば、待遇もそれに見合うべきでしょう。

 

と、いいつつも、ダニエル・ピンク氏のTEDは有名すぎるように、インセンティブは限られた状況でしかワークせず、パフォーマンスの向上につながるのは内的なモチベーションという研究結果もあるので、単純に給与体系だけでは議論できず、そのあたりは永遠の課題ですね。

 

www.ted.com