気休めなもの。役立ちのもの。

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サルとイヌの共同ブログ

【お気楽映画レビュー:★★★】『湯を沸かすほどの熱い愛』で引くほど泣いた

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画像:「映画『湯を沸かすほどの熱い愛』オフィシャルサイト」より引用

自分でもドン引きするくらい泣きました。

文句なしで素晴らしかった。鈴木おさむ氏のレビューに偽りなし。海外から観るためにわざわざAmazonビデオで購入した甲斐があったってもんです。

 

1. 家族のつながり

この映画、あらすじだけ読むと「死ぬまでにしたい10のこと」に似ているように見えますが、実際は違います。これは母の深い愛による「献身」の話であり、そして母からの家族への最後のプレゼントであり、さらに「家族って何だ?」と観る人の心に問いかける一作です。

銭湯・幸の湯を営む幸野家。しかし、父が1年前にふらっと出奔し銭湯は休業状態。母・双葉は、持ち前の明るさと強さで、パートをしながら娘を育てていた。そんなある日突然、余命2ヶ月という宣告を受ける。その日から彼女は「絶対にやっておくべきこと」を決め実行していく。【家出した夫を連れ帰り家業の銭湯を再開させる】【気が優しすぎる娘を独り立ちさせる】【娘をある人に会わせる】その母の行動は、家族からすべての秘密を取り払うことになり、彼らはぶつかり合いながらもより強い絆で結びついていく。そして家族は、究極の愛をこめて、母を葬(おく)ることを決意する

  

2. 何よりも深い愛・強い母

宮沢りえ演じる母・双葉の時間を超えた愛情に涙がとまりませんでした。ダメな夫を許し、連れ子を引き取り、自分の娘との間にあるやるせない運命のいたずらを乗り越え、ひたすら残される家族のために。「家族を愛するって何だろう」がこの映画に詰まっています。

 

ネタバレになるので深く書きませんが、家族のルール(この映画では「誰かの誕生日はしゃぶしゃぶを食べる」)って、いつまでも忘れないある種の儀式で自分が家族の一員であるという拠り所だと思うんです。それを通じて連れ子を家族の一員として迎えていくシーンに涙腺崩壊。

 

あとはオダギリジョー演じる本当にダメな父が最後に贈るプレゼント。それを観て初めて弱音を吐く双葉。強い母が本音を一人きりで漏らすシーンに、私の涙腺はポンコツになりました。

 

3. リアルじゃないけど最高にリアル

賛否両論あるであろうラストシーン。でも私はこれってすごいリアルだと思うんですよね。現実にできるかどうかは別にして。素敵な最後だと思いました。このラストシーンで、初めて母・双葉は皆の本当の家族になれたんです。そう思ったら再度涙腺崩壊。

 

さらにこれは残された家族の門出でもある儀式なんです。絶対に一生忘れない儀式。家族だけの秘密。実現性を越した感情面のリアルさに、製作者のこだわりを感じた次第です。

 

またこの映画を引き立てているのは駿河太郎演じる探偵。彼もまた双葉によって背中を押してもらった1人なのです。彼という他者がいることで、この映画はグッと安心感のあるものになりました。

 

今日の「お気楽映画レビュー」

間違いなくオススメ。 とにかくオススメ。もう何も言わず観て欲しい。それだけです。

家族ってやっぱり、いいですね。 

湯を沸かすほどの熱い愛
 

 

 

【お気楽映画レビュー:★★★】ヒメアノ~ルには「救い」がある。

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画像:「映画『ヒメアノ~ル』 | 大ヒット上映中!」より引用

シビれる映画でした。 

古屋実原作の「ヒメアノ~ル」をお気楽レビュー。超オススメの映画です。

 

 

1. 99分で二度楽しめる

ヒメアノ~ルは99分という短い映画。しかし前半と後半でガラッとトーンが変わります。トーンが変わる瞬間は、まさに桃鉄の「ボンビー」が「キングボンビー」に変身する瞬間を想起させます。それはまるで「日常」がある時突然ガラッと奈落の底に落とされるようなメタファー。

ドロドロした上に、ダラダラ長くて後味悪い、一歩間違うとそうなりかねない映画だったと思いますが、この映画はそうではありません。心理描写やキャラクターの背景が99分にギュッと詰められています。それを成立させた映画そのものの表現力の高さ、そして俳優陣の演技力の高さは必見です。

 

 2. 「森田」が怖すぎる

各レビューでも大絶賛ですが、森田剛の演技が半端じゃないです。本当に狂気。それは映画の中の「森田」が狂っているのか、演じている森田剛が狂っているのか、途中で境目がわからなくなる程です。その狂気の渦中にある「森田」と友人に1人はいそうな濱田岳演じる「岡田」のギャップが、さらにリアル。より一層観ている人に恐怖を感じさせます。

 

3. 「救い」がある 

でもこの映画が「グロ系」映画と一線を画すのは、「救い」があるからです。比較する対象として適切じゃないかもしれませんが、映画「脳男」は全く救いのない映画。が故に見た後の後味の悪さが半端じゃない。

 

 

でも「ヒメアノ~ル」は、最後観た時に救われます。それは、吉田監督が原作を変えてまでこだわった部分なのでしょう。そしてムロツヨシ演じる「安藤」の存在。観た人には絶対納得いただけるポイントだと思います。 

 

今日の「お気楽映画レビュー」

最近、漫画原作の映画が多いですね。ヒメアノ~ルはその中でも強烈にオススメしたい映画です。家族や子供と観るのにはちょっと向きませんが…。

 

「情報」とは何か。

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「情報」ってなんだろう?

仕事をしていく上で、また生きていく上で必ず向き合わなければ行けないもの。それは「情報」。あまりに広いその意味に惑わされてしまうので、今日は 我々が日頃接している「情報」にどんなものがあるのか、考えてみたいと思います。なお、この記事は「5.意見」にカテゴライズされますのであしからず。

 

 

1. 事実

これはとても簡単ですね。辞書にある通り「実際に起ったこと」であり、誰が聞いても見ても変わらないこと、です。もっとも情報の中で、正確性が高いもの、と言えます。

例)

 

2. 科学的に証明されているもの

科学的に証明されているものは、情報として十分に確かである、と言えます。「同じことを同じ条件で試せば同じ現象が結果として得られる=科学的である」と言えるでしょう。

例)

  • 水素と酸素を化合させると水ができる。

 

3. 統計分析等で導かれた法則

辞書によると法則とは「一定の条件のもとで、必ず成立する事物相互の関係。また、それを言い表した言葉や記号。」とありますが、世間一般ではもっと広い意味で使われているように思います。

よってもう少し使われている現実に即して「一定の条件のもとで、高い確率で成立する事物相互の関係。」としたいと思います。以下の有名な法則についても、高い確率で当てはまりますが、まったく当てはまらないケースもあります。例えば記憶力が尋常じゃないほど高い天才にはエビングハウス忘却曲線はあてはまらないでしょう。「法則」は便利な言葉なのでよく引用されますが、どういった「条件下」という点にも目を光らせる必要があります。

例)

 

4. 経験則・権威

世の中の多くのビジネスベストセラーは成功者の「経験則」に当てはまります。この経験則は曲者で、再現可能性は上記の3つに比べてグッと落ちます。

例えばイチローが「毎日素振りをしてきたからメジャーリーガになれた」と説明したからといって、ある少年が毎日素振り続けてイチローのような大リーガーになれるとは限りません。「同じ人間がやっている」という意味では条件は一緒ですが、それ以外の条件が幅広すぎるのです。その割に世の中では、この経験則というのは重視されます。

権威についても似たような性質があります。例えばサッカー元日本代表岡田監督が「久保のドリブルに最近キレがなくなっている」と全く根拠なく言ったとしても「そうなのかもしれない」と人々が真に受ける、久保選手だって真に受ける可能性があります。一方でサッカー素人の私が言ったとしても誰も聞いてくれないでしょう。なぜなら私には経験がなく、またそれに支えられた権威がないからです。たとえ同じことを言ったとしてもその意味合いが変わってくるのです。

なお、経験則は隣のおばちゃんが「このヨーグルトを食べたら便秘が治ったの」という程度のものも含まれます。

例)

  • 〇〇をやってきたから僕はプロサッカー選手になれた。
  • 大学教授が◯◯と言った。

 

5. 意見

さらに情報の正確性と性質が変わるのが、「意見」です。「意見」とは自分の考えを述べることです。それが例え事実に基づいておらず、ましてや嘘であったとしても「意見」となります。そして「意見」というのは、我々の生活の中で情報の大半を占めます。世の中に溢れていますし、職場にも溢れています。

厄介なのは、この意見が、あたかも「1. 事実」「2. 科学的に証明されたもの」「3. 統計分析等で導かれた法則」のように語られることがあることです。ですから、それを見分けるために「情報リテラシー」が重視されるのです。

なおこの意見をある程度経験を積んだ人、社会的権威がある人が言うと「4. 経験則・権威」になることがあり、ここの境界線は若干曖昧と言えるでしょう。

例)

  • 僕は次郎が世界一のラーメンだと思う。
  • トランプ大統領は、最高の大統領だ。

 

6. 未確認・不確定情報(又聞き・噂・憶測)

「5. 意見」との境界線が曖昧なために見分けるのが難しい「6. 未確認・不確定情報(又聞き・噂・憶測)」。

例えば、伝言ゲームがわかりやすいですね。ある事実が報告されていく過程で、途中で「5.意見」が混じったり、勘違いが起こったりしていしまい、到達する頃には、全く違う情報になってしまうことがあります。バカみたいな話ですが、これって本当によくあるんですよ。未確認情報で検討を進めてしまうと非常に危険なことになりかねない。例えば警察の場合、冤罪にもつながってしまいますね。このカテゴリーには日頃から気をつける必要があります。

往々にして飲み会の話題にでてくる「どっかのサイトでみたけど、〇〇と〇〇付き合ってるらしいよ」も同カテゴリーです。

例)

  • 重大事故発生(事実)→重大な事故が発生しました(現場担当)→事故が発生したようです(課長)→事故の報告がありました(部長)→軽微な事故が発生したようですが対応済みです(役員)→お疲れ様(社長)
  • トランプ大統領が大好物は次郎ラーメンらしいと何処かのサイトでみた。

 

今日の「役立ち」

いかがだったでしょうか、日々接している情報を無意識に振り分けていながらも、意識的にカテゴリー分けして考えることは少ないと思います。今回の情報のカテゴリー分けは、あくまで私個人の独断と偏見に基づくものですが、重要なのは「自分が意識して情報を精査しているか(=情報リテラシー」ということ。

この記事をきっかけに、皆さんが一度立ち止まって、情報について考え整理し、仕事や日々の生活の質を高めて頂くことにつながれば、この上ない幸せです。

やがて悲しき「日本型の産業化支援戦略」

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新しい開発論を考える上で「日本型の産業化支援戦略」が興味深いので、以下まとめてみたいと思います。

 

  

1. なぜ提言がつくられたか?→作成の目的は「これまでの整理不足とアピール不足」

作成の目的を噛み砕くと「今まで日本の途上国への援助戦略は成功してきたが、それらがちゃんと整理されておらず、国際的にアピールすることが必要だと感じたから」というもの。開発論・援助論には色々な切り口がありますが、この提言は『「産業発展」と「雇用の創出」が開発支援の中心課題である』という立場にたって、議論が進められます。本提言内で述べられてる主要ポイントは4つ。

(1) シークエンス(連鎖)のある支援を実現する

(2) FDI(Foreign Direct Investment,海外直接投資)の促進を目標とする

(3) 農業でも革新的な支援を推進する

(4) エビデンス(科学的根拠)に基づく支援を追求する

 

なお、この提言に以下の記載があります。

つまり開発援助の世界には、関係者の誰もが賛同するような効果的な「開発支援戦略」がないのである。 そのために途上国の開発支援は、課題対応型の対策に終始してきたのが実情である。 

 

これは開発実務者にとっては至極当たり前の話で、例えば海に接していない内陸国ウズベキスタン)と島国(スリランカ)では、根本的に国家政策が変わってきます。なぜなら「海」に接しているかどうかで、貿易・防衛といろんな要素に差がでてくるからです。これは一例ですが、その他様々な要素が複雑に絡み合っており、宗教や文化も大きな鍵になってきます。よって国ごとに処方箋を変えなければいけないことから関係者の誰もが賛同するような効果的な「開発支援戦略」がない』のは当たり前のことなのです。

 

一方で日本がこれまで支援してきた事例を「ひとつの型」としてまとめて、世界に発信するのは有意義ですね。型なくして応用なし、ですから。

 

2. キーワードは「人材育成→インフラ支援→金融支援→外国企業の進出」であり、アクションプランは「JICAとJBIC頑張れよ」&「もっとエビデンスに基づく研究をやろう」

「産業発展」と「雇用創出」が最終目的にあることから、支援において「人材育成→インフラ支援→金融支援→外国企業の進出」の流れを当初から意識することが強調されています。

 

特に最初の3ステップは公共性の高い事業であり、民間で実施しにくいことから「民間セクターの意見も聞きながら、JICA頑張れよ。民間セクターの色が強くなってきたら、JBICも頑張れよ」という議論になっています。実施に移すためには、しっかりと日本として「予算をつけ、優秀な人材を集めること」が重要でしょう。「頑張れ」だけでは、何も変わりません。エビデンスに基づく研究についても、ぜひ早期実現をお願いしたいと思います。

 

少し曖昧なのが、「外国企業の進出」は「日本企業の進出」と同義なのか、という点です。最終的に日本が育てた人材育成、整備したインフラ・投資環境を土台に、中国企業・韓国企業が進出し、被援助国の「産業発展」と「雇用創出」に貢献した場合、日本はどのようなスタンスをとるのか。もし日本企業進出を念頭に置くなら、どのような手をとるのか。そもそも今後他国に日本企業は進出を望まれるのか。そこをクリアにしないと実務になった際に、必ず問題になります。

 

「各セクターが有機的に連携」とありますが、そんな言葉で逃げてはダメです。

 

3. 最終目標は、FDI(海外直接投資)の活性化

上記のキーワードに含まれているように、最終目的は外国企業に対する直接投資です。以下のとおり、民間セクターの投資というのは量的にもインパクトが大きいためです。

多くの実証研究が明らかにしているように、外国企業による直接投資は、様々なチャ ンネルを通して投資受入国の経済発展に貢献する

ODA による支援の連鎖で鍵となるのは、それが最終的に民間セクターによる FDI の呼び 水あるいは潤滑油となることである。金額ベースで FDI は ODA の9倍近くに達しており、 FDI が途上国経済に与えるインパクトは ODA よりもはるかに大きい 。

 

一方(全ての方の経歴を調べたわけではありませんが)この提言作成に携わった方々に現役で民間セクターの方が皆無です(住友商事荒川顧問はもともとJICA出身)。

 

最終地点としてFDIを提言するからには、そして少なからず日本企業の進出を念頭においているのなら、もっと民間がどのようなタイミングで投資判断をするのか、という議論を含んでもよかったように思います。20年前と今では投資を判断するための要素も分野も違うはずです。

 

今日の「役立ち」

この提言は野心的で新たなチャレンジだと思います。わかりやすく日本の支援の型を説明する、という点でも実務的に役立つでしょう。

 

一方で、上記に挙げたポイントがより議論され、実際のアクション(つまりは予算や人の動員)にまでつながらなければ、何も変わらないのも事実。 また、本来意義に立ち戻って、英語でも発信していただきたいと思います。

 

ではでは。

【必見】英語とビジネスとユーモアを一気に学べる最強のブログ

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画像:「Office Humor, Tech Culture, Trending News」より引用

一石三鳥!

このブログ、めちゃくちゃ面白い。 

thecooperreview.com

 

世界中で読まれている人気ビジネスブログなだけあります。2016年12月に本も出版されていますね。

何が凄いってブログ、英語学習やビジネスにも使え、そしてユーモアも楽しみながら学べる一石三鳥のブログなのです!

 

1. 英語学習コンテンツとして

コンテンツが非常に豊富です。またイラストもたくさんあり、非常に読みやすい。日常的に使うような現代英語も取り入れられていて、楽しみながら勉強することができます。個人的なオススメ記事は「女性の恐れられないリーダになる9つの戦略」「会議で頭がよく見える10のコツ」「GoogleAmazonFacebookの最優秀な人材を雇うための秘密」の3つ。どれも単純に面白いです。

また映像コンテンツも充実しているのでリスニング対策にも使えます。

 

2. ビジネススキルとして

冒頭の画像のようなユーモア溢れるビジネススキルが散りばめられています。ここでは一例を紹介。

 

・エンジニアが行ったことを、そのまま繰り返す。とってもゆっくり。

確かに想像すると頭良さそうに見える。というか、こういう人いますよね。

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画像:「Office Humor, Tech Culture, Trending News」より引用

 

・「一つ前のスライドに戻ってもらえますか」

これも頭良さそうに見えます。たとえ全く聞いていなくても、ちゃんと聞いているかのように振る舞えますね。もし前のスライドの戻って何も言うことがなくても、適当な数字を拾って「その数字の意味がちょっとわからないのだけど」と言えばいい、という解説付。勉強になります。

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画像:「Office Humor, Tech Culture, Trending News」より引用

 

3. 大切なユーモア

上記のとおり、ビジネスに関するユーモアも豊富で楽しめますが、オフィスの場を離れた時のユーモアも満点。「日曜日にやればいいや」といってベッドから起きられずに結局できなかったこと、皆さんにも「あるある」なはず!

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画像:「Office Humor, Tech Culture, Trending News」より引用

 

 今日の「役立ち」

いかがだったでしょうか。全文英語なので少しハードルが高いように思えるかもしれませんが、イラストも多くざっと眺めるだけでも楽しめます。「ビジネスあるあるは世界共通なんだな」という部分だけでなく、「あれ?これはあんまりおもしろくないけど文化の違いかな」というユーモアの違いも学ぶことができます。

 

なんちゃってビジネススキルの部分は、読みながら「頭良さそうにTED風プレゼンをする方法」を思い出しました。久しぶりにみてもやっぱりメチャクチャ面白い…。

 

www.youtube.com

 

なぜリーダーには現場力がないのか?

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「現場力」。言葉は簡単、実践は超困難。

ライフネット生命社長岩瀬氏が大絶賛の「リーダーの現場力」を読了しました。一貫したキーワードは「現場力」。ボロボロだったミスターミニットを当時29歳で立て直していく迫氏の姿はアラサー世代として強く響くものがありました。表題は国際協力というフィールドで「現場力」の重要性がわかっていながら、なかなか実践できない自分に対しての問いかけでもあります…。 

 

1. 腹の底から「現場」を理解するのが難しい

頭で理解していても、腹の底」から理解するのは、とても難しい。誰も「現場が重要じゃない」なんて言いません。ただ「現場が重要である」というのを腹の底から理解し、信じていないとそれが「行動」にならないのが事実。

本書にある通り、リーダーが現場にしか答えはない、というのであれば、出向いていって「教えてください」と頭を下げるのも厭わない、そういった「行動」が自然とでてきてもおかしくない。自分も含めて「現場は大事だけど…」の「だけど…」が大きな壁になっています。 

 

こんな状況になった原因は、事業の本質であり、最大の収益ドライバーが「現場」であるということを経営サイドが腹の底から理解していないからだ。

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本書を読みながら、ふと「踊る大捜査線」を思い出しました。踊る大捜査線の幹部陣と同じで、リーダー(つまりマネジメント職)の心の底のどこかには「クーラーの聞いた部屋で決定権を持っている俺の方が偉い」という気持ちがどこかにある。「そんなことはない」と自分が問われれば否定してしまうでしょうが、現場の声を吸い上げて活かしきれていない、つまり行動に移せていない、ということは弁明の余地がないのとイコールです…。

繰り返しになるが、現場と経営の違いは、「偉さ」ではなく役割。リーダーに必要なのは、むしろ現場に「自分の知らないことや経営のヒントを教えてください」とお願いする姿勢だろう。

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たとえ現場の重要性を理解して行動に移せても、その先には「現場が正直で重要な意見を忌憚なく与えてくれるか」という難題が残ります。そのためには「信頼される」ということが最優先。現場を尊重するから信頼される、信頼されるから現場を尊重できる。これほど文字すると自明なのに、行動に移すのが難しいことはないのです…。

 

けれど、「論」の正しさをいくら振りかざしても人はついてきてはくれない、と澤田さんは言う。新米リーダーである僕が最初にしなければならないことは、正論を振りかざすことではなく、みんなの信頼を得ることだ。「立派な経営者」を目指す前に、「信頼されるリーダー」にならなければならなかったのだ。Read more at location 533

 

2. 社会的想像力が乏しい

本書内で紹介されている社会学の「社会的想像力」という考え方は、不機嫌な職場の救世主かもしれません。簡単に言えば「人が悪いのではない、環境や仕組みである」というもの。少し長いですが、以下の例がわかりやすいので引用させて頂きます。

 

たとえば、ホームレスを見て「この人は怠け者だから」「能力が低いから」「幼少期のトラウマがあるから」ホームレスになっているのだろう、と判断するのは社会学的想像力とは遠い考え方。問題が起きている理由を個人に求める、心理学に近い考え方だ。 反対に、「こういう地域で育ったから」「こういう家族構成だから」「こういう時代に生まれたから」など、問題を国や地域、家族、宗教といったグループとひもづけるのは、社会学的想像力を踏まえた考え方ということになる。だから、「企業」という集団の在り方を論じる経営学も、社会学に近いと言えるだろう。

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ともすれば、非常に他人任せで、いわば「甘やかし」の論理でもあります。しかしながら、「こいつの努力が足りない」「あいつの能力が低い」というのは、むしろリーダーに対する「甘やかし」の論理。今そこにあるリソースを十分に活用すべく、社会学的な視点を取り入れて、現場の仕組みを構築する必要があると言えそうです。

 

責任はすべて個人ではなく仕組みにある」という社会学的な考え方に基づけば、担当者のアクションが鈍くなったら、それは組織のキャパシティを超えてしまったという「サイン」だ。

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3. 「好き」と「コミットメント」が欠けている

上記2つに増して重要になるのは「好き」と「コミットメント」。好きであればコミットできるし、コミットできれば好きでいれる。好きでコミットしていれば、腹の底から現場を大切にできる。そして「好き」は努力次第で生み出せる。本書の中でもっとも大切な部分ではないかと思いました。

 

リーダーであろうとなかろうと、自分の事業を好きになる努力は不可欠だ。そして、嫌いでさえなければ大抵のものは努力次第で好きになれるものだと、僕は思う。

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 リーダーは、誰よりも「事(こと)」にコミットメントしていなければならない。そしてそのためにはまず、心理的にも物理的にも「事(こと)」にどっぷり浸かれる環境に身を投じることだ。

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その「好き」と「コミットメント」があるからこそ、大胆な施策が打てるのだと思います。 

 

僕は「『なんとなく』はすべて止める」と腹をくくり、そこで浮いた人やお金を現場に投資することにした。

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文字にすると2行になる上記の行動。しかし並大抵のコミットメントでないことがひしひしと伝わってきます。

 

今日の「役立ち」

文章の中に、「マザーハウスで働きながらアート学校に通う」という下りがあります。私は、その気持ち、非常によくわかります…。今はまだマシですが、自分も本当に迷走している時期がありました。これは誰もが一度は通る道ではないでしょうか。自分に足りない何かを探してスキルと成長を求める、でも本当に自分が実感できる成長は「好き」と「コミットメント」の延長にしかない。 

 

自分のスキルを高めるためにあらゆる手を尽くした。でも、それが結果に結びついている感覚は乏しかった。 その理由は、いまならわかる。 結果を出すためには「自分の成長」を考える必要はなかったのだ。自分の成長は「事(こと)」に当たることの副産物でしかない。それなのに、副産物を目的にして、囚われていた。

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将来の働き方、今後のキャリアに悩み始めているアラサー必読の書と言えます。  

【お気楽映画レビュー:★★★】「怒り」は、ストーリーよりも感情のディテール

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画像:「映画『怒り』公式サイト」より

文句なしの★3つ。

あまりに上司が絶賛するので、わざわざU-NEXTとセカイVPNの合わせ技でどうにかみました。結論から言うと「素晴らしかった」。

 

Amazonビデオでも観れます。

怒り

怒り

 

 

 

1. ストーリーよりも感情

もちろんストーリーも面白い。一つの殺人事件、その容疑者に共通点のある素性のしれない男3人。最後の最後まで誰かわからない犯人。本当に手に汗握る展開でした。一方で終わって冷静になって振り返ってみると「あそこの設定なんでなんだろう」「そういえば、あの場面きちんと説明されていなかったな」という点もチラホラ。でもそんなのは全く関係ないんです。なぜならこの映画は「感情」の映画だから。ストーリーがどのように展開されるのか、よりもそれに巻き込まれた一人ひとりの感情がどう揺らめいて行くか、に惹きつけられるのです。目を背けたくなるようなシーンもあります。でもそれは遠いフィクションの話ではなくて、実際にありえる話。我々が映画で感じた感情は、その揺さぶりは、現実世界で起き得るのです。

 

2. 圧倒的な演技力の共存

上記の「感情」は、豪華キャストの圧倒的な演技力に支えられています。妻夫木聡綾野剛広瀬すず宮崎あおい、は特に圧巻。この演技力だからこそ、細かい設定が見えてこなくても、演じるキャラクターが1人の人間として捉えることができます。すでに本編が2時間20分と十分に長いですが、もしこの映画がこの影技力に定評のある豪華キャストでなかったら、きっともっとキャラクターの背景部分に時間が取られて長くなっていたことでしょう。

 

3. 人を信じることの難しさ

「怒り」というタイトルですが、この映画の一貫したテーマは「人を信じること」ということです。「信じて裏切られる」「信じることができずに苦しむ」「信じられて苦しむ」「信じられずに悲しむ」といった「信じる」という普遍的な、そして日頃我々が何気なく行っている行為が、極限の場面で人間関係にどういった影響をおよぼすか、それに誘引されて、どのような行動をおこすのか。観ていて胸をえぐられます。

 

今日の「お気楽映画レビュー」

正直、ここまで凄い映画とは思いませんでした。文句なしでオススメできます。映画とは「普段感じない(ようにしている)感情の拡張」だと改めて強く思い知らされた次第です。

 

原作も読んでみようかな。